菌からクスリ
北里大学の大村特別栄誉教授が、自然の微生物から感染症の薬となる物質を発見し、画期的な
成果をあげたことで、「ノーベル生理学・医学賞」を受賞しました。
開発した薬は、感染者の2割が失明するとされるオンコセルカ症や、足が肥大化するリンパ系
フィラリア症の感染症対策薬として、劇的な威力を発揮しているそうです。
大村教授は、土壌の中に生息する微生物の中から独自手法で膨大な数の放線菌を調べ、病原体
微生物を退治する約50種類を抽出して、同時受賞をしたキャンベル氏らが感染症に非常に
効果のある物質を出す放線菌の種類を明らかにしました。
この放線菌は、静岡県内のゴルフ場近くで採取した土から見つけたそうです。
放線菌と薬の関係は、約70年前に始まります。
1944年、アメリカのワクスマンが、結核菌が増えるのを阻止する物質を放線菌から発見
しました。この物質が“ストレプトマイシン”です。
このときワクスマンは、微生物によって作られ、他の細菌やカビなどをやっつけてくれる物質
を「抗生物質」と名付けました。
それ以前に、人類が最初に手にした抗生物質として「ペニシリン」が発見されています。
発見から8年後、この発見に対し、ワクスマンは大村教授と同じノーベル生理学・医学賞を
受賞しています。
ストレプトマイシンの発見をきっかけに、放線菌から数多くの抗生物質が発見されています。
その中に、大村教授が発見した「エバーメクチン」もありました。
今では、抗生物質の7割が放線菌からつくられています。
細菌やカビと聞くと、人間に悪影響を及ぼすものと思いがちですが、こうやって人類の役に
立っている微生物がたくさんいます。肉眼では見えない世界の奥深さを感じます。
ただし、感染症によっては、抗生物質を服用しすぎると必要な菌まで倒してしまい、抵抗力
がなくなってしまう危険性があります。
日本のような衛生状態の良い国では、なるべく抗生物質を服用する必要のないよう、いつも
健康でいられるように心掛けましょう。
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