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2016年4月

 ロタウイルス感染症の流行時期です

  国立感染症研究所によりますと、乳幼児をはじめ子供を中心に急性の胃腸炎を引き起こす「ロタ
  ウイルス感染症」が、今年に入って過去3年間を上回るペースで広がっています。


  ロタウイルスやノロウイルスなどが原因となる急性感染症胃腸炎は、秋から冬にかけて流行します。

  ロタウイルス感染症の流行時期は、2月頃から流行し始め、例年4月から5月にピークを向えます。
  ノロウイルス感染症の流行のピークは、11月から2月です。


  ロタウイルス感染症とノロウイルス感染症の症状は、嘔吐や下痢、発熱など同じようなものですが、
  ロタウイルスの方が症状が長引きやすいようです。


  またノロウイルス感染症は、乳幼児から高齢者までの幅広い年齢層に急性胃腸炎を引き起こすのに
  対して、ロタウイルス感染症は乳幼児などの子供が中心に発生しやすいことが特徴です。大人は感染
  しても軽症ですんだり発症しなかったりするようです。

  乳幼児のほとんどが感染し、初感染時に重症化しやすいことが知られています。
  世界ではロタウイルス感染症により、約50万人の5歳未満の子供が死亡しているといわれ、その
  80%以上が発展途上国で起こっているとされています。

  日本での死亡例は稀ですが、感染者数は非常に多いため、危険であることに変わりありません。


  ロタウイルスは少量(10~100個)でも体内に入れば増殖し発症するほど非常に感染力が強く、
  生存力も強いため、感染予防はきわめて難しいといわれています。

  それでも、感染を拡大させないためにも、ウイルスの特性を正しく認識して、予防を心がけること
  が
重要です。


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 茨城での結核集団感染 感染者増える

  3月に茨城県の病院で発生した結核の集団感染について、その後の調査結果を茨城県が発表しま
  した。

  当初発表された感染者は、結核を発病した80代の女性の家族と看護師ら11人で、そのうち5人
  が発病したということでした。

  その後、調査対象者を拡大して健診を行った結果、新たに19人の感染者が確認され、そのうち
  7人が発病していたことが判りました。

  今回新たに結核発病者と診断されたのは、30代と50代の2名の看護師と、60歳以上同室入院
  患者やその家族らの方たちでした。
  その他に、90代の女性1名だけは施設利用者で、この方は結核性胸膜炎で亡くなっています。

  発病した方たちは、全員通院もしくは入院治療中ということです。

  初回発表と合わせて30人が感染し、12人が発病したことになります。

  12人の発病した方のうち、1名だけが最初に発病した女性の家族の男性で、あとの11名は女性
  でした。
  発病はせず潜在性結核感染者と診断された方たちも、女性が圧倒的に多くなっています。

  (女性の方が感染しやすいというようなデータはありませんので、病院には女性が多いということ
    でしょうか。)


  昨年暮れから今年の初めに警視庁渋谷署で発生した結核集団感染でも19人の感染が確認されてい
  ます。

  結核の初期症状は風邪とよく似ているため、知らずに感染が拡大してしまいます。

  そして発病すると治療にかなりの時間を要します。


  日本では毎年2,000人以上が結核で亡くなっています。

  改めて結核について再認識する必要があります。

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 都内で結核集団感染

  警視庁渋谷署で、2015年末から2016年にかけて署員19人が結核に集団感染していたこと
  が分かったと新聞やニュースが報じました。
  19人のうち6人が発症しており、この6人を含む12人が投薬治療を続けているということです。

  感染元は、渋谷署で留置していた60代の男性の可能性が高く、感染した署員の大半は、その男性
  を担当していた模様です。
  男性は署内で体調を崩し死亡、当初は肺炎が原因とされていましたが、その後「肺結核」原因であ
  ることが分かりました。

  また、死亡した男性の解剖を担当した東京都内の大学病院関係者も7人が感染していたことも判明
  しています。


  大学病院の調査で肺結核だと分かったのが2015年6月であるのに、渋谷署が把握したのが2ヶ
  月後の8月です。
  また、本来結核が判明した時点でただちに最寄りの保健所に届け出る義務があるにもかかわらず、
  保健所に届け出たのは2016年1月になってからということでした。


  現在は、昔に比べて結核患者が少なくなって関心が薄れており、薬も開発されているため、結核が
  軽視されていることが報告の滞りを招いた可能性があります。

  インフルエンザは大騒ぎされますが、結核の方がもっと恐ろしい病気であるため、感染症法の指定
  されているにもかかわらずです。


  今年3月にも茨城県の病院で結核の集団感染が発生しております。

  多剤耐性結核も確認されており、もっと注意するべきだと思われます。


  日本は欧米先進国に比べてまだまだ結核罹患率は高く、世界の中では中まん延国とされてい
  ます。

  「結核は昔の病気」ではありません。

  

 必要でない場合が多い抗生物質

  抗生物質が効かない薬剤耐性菌の対策として、政府は抗生物質の使用量を2020年までに
  3分の2に減らす目標を掲げ、行動計画案を策定しました。


  薬剤耐性菌は世界中で非常に問題となっており、2013年の薬剤耐性菌による死者は全世界で
  70万人に上っており、2050年には1,000万人を達するとの予測もあります。


  ちなみに抗生物質と一口に呼ばれることが多いのですが、「抗生物質」は微生物から抽出された
  天然由来の物質になります。
  その他、人工的に合成して作ったものは「抗菌剤」と呼ばれ、両方を合わせて「抗菌薬」と呼ばれ
  ます。「抗生剤」と呼ぶこともあります。


  薬剤耐性菌が出現し、このような状況になってしまったのは、医師から「念のため出しておきま
  しょう」と抗生物質を安易に処方され、乱用しすぎていることこそが原因といわれています。

  よく見られるのが、風邪やインフルエンザで抗生物質を処方される場合です。

  風邪やインフルエンザはウイルスが原因であるため、大半は効果がありません。
  また、ウイルス感染症の2次的な細菌感染症の予防に抗生物質は意味がなく、それどころか
  薬剤耐性菌による感染症を引き起こすこともあります。

  その他にも、副鼻腔炎や気管支炎など抗生物質が必要のない場合でも処方されることが少な
  からずあるようです。

 

  抗生物質は、病気の原因となる細菌を死滅させるための薬です。
  ただ、悪い細菌だけでなく、人間にもともと棲みついている必要な細菌まで死滅させてしまう
  という問題があります。

  それによって、本来体が持つ免疫機能も衰えてしまい、生き残った薬剤耐性菌の勢力がさらに
  増すことになります。


  目に見えないあんなに小さな細菌が、どうやって耐性を獲得できるようになったのかはわかりま
  せんが、細菌自身が薬を無効化してしまう酵素を作り出したり、自分自身の構造を変化させたり
  します。薬剤を排出させるポンプ機構を獲得する細菌もいて、まさに驚異的です。


  WHOは、昨年から抗菌薬の適正利用を呼び掛ける目的で「抗菌薬啓発週間」を設けました。

  抗菌薬は非常に効果の高い薬です。しかし必要のない人が服用すれば、副作用ばかりで何も
  いいことはありません。

  医師も消費者も抗生物質の適正な使用を心がけていく必要があります。

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 結核などのワクチンとワクチン歴史

  ワクチンには、前回の不活化ワクチンの他に生ワクチンとトキソイドがあります。

  生ワクチンは、使用するウイルスや細菌は生きてはいるものの、そのウイルスや細菌の毒性を
  弱めて発病しないぎいぎりのところまで抑えたものです。
  病気に自然に感染した状態と同じように免疫が作られ、1回の接種で十分な免疫ができます。

  病原性を弱くしたウイルスや細菌といっても、そのものを身体の中に入れますので、接種して
  から1から3週間は、もともとの病気と同じような軽い症状がでることがあります。


  生ワクチンの代表的なものに結核に対する「BCG」があります。

  BCGを接種すると、人間に備わっている免疫シスムテムによって、体は結核菌を攻撃するT細胞
  を作り出します。このT細胞が今後体内に入ってくる結核菌を排除してくれます。

  他の生ワクチンには、はしか(麻しん)、風しん、おたふくかぜ、みずぼうそう、ロタウイルスなどが
  あります。


  トキソイドは、不活化ワクチンとほとんど同じようなものです。

  細菌の出す毒素が免疫を作るのに重要なものもあり、そのような毒素の毒性を取り除いて、免疫
  を作る能力だけにしたものです。

  トキソイドには、ジフテリア、破傷風などに対するものがあります。

 

  予防接種の考え方は、かなり昔からあり、非常に長い歴史があるといわれています。

  現代のワクチンの礎を築いたといわれるのが、イギリス人医師のエドワード・ジェンナーです。

  天然痘がもっとも恐れられていた当時、ジェンナーは、人間には毒性が弱いと分かった牛の天然痘
  を人に感染させ、予防する方法を完成しました。1796年のことです。

  それ以前には、1700年代前半のトルコでは、すでに軽度な症状の天然痘菌を直接接種する予防
  方法を確立していたという記録が残されています。

  但し、この時代は天然痘の原因が理論的には分かっていませんでした。

  
  1800年代に入り、フランスの細菌学者のルイ・パスツールが病原体の培養を繰り返すことで毒性
  を弱め、これによって免疫ができることを科学的に解明しました。

  これが基盤となり、現代のワクチンにつながっています。
 

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