2017年10月
燻煙で殺菌・防腐効果
食材の保存性を高める方法の一つに“燻す”があります。
いわゆる“燻製”にするという方法です。
まずは塩漬けにすることで、浸透圧により、その食材の水分が排出されます。これによって食
材中の水分が少なくなり、雑菌が繁殖しにくい環境になり、殺菌効果ももたらしてくれます。
その後、塩抜きして乾燥させ、木片(チップ)を燃やした煙で燻し、風味付けなどをします。
燻す煙には、食材を殺菌、防腐する成分が含まれており、保存期間を延ばす効果が得られます。
この煙を燻煙といいます。
燻煙に含まれる殺菌・防腐成分の代表的なものとして、フェノール系化合物やホルムアルデヒ
トなどがあります。
フェノール系化合物は、食品に反応して表面に固い樹脂膜を作りコーティングします。それに
よって、細菌の侵入を防ぐという防腐効果を発揮します。
他にも煙の中には、カルボニル化合物や有機酸類が含まれており、風味や香味に影響を与えま
す。
カルボニル化合物は、ほのかな渋みと苦味などが生み出す深い味わいに大きく関係していると
いわれています。
燻製と一言にいっても、作る食材によって温度設定や煙をかける時間が変わり、3種類に分け
られます。
・冷燻法 貯蔵が主目的 15~30℃ 1~3週間
(骨付きハム、ベ-コン、ドライソーセージなど)
・温燻法 調味が主目的 50~80℃ 1~12時間
(ボンレスハム、ロースハム、ソーセージなど)
・熱燻法 調味が主目的 120~140℃ 2~4時間
(釣った魚、チキン丸ごとなどをその場で調理)
保存性を高めるためには、低めの温度で燻す時間を長くする冷燻法が適しています。
燻製の歴史は非常に古く、ベーコンは紀元前に原型ができ、ジャーキーはアメリカ発見の前から
インディアンが食べていたとされています。
日本では、秋田県の漬物「いぶりがっこ」は、室町時代に誕生したそうです。
その頃は、雑菌の繁殖という意識はなかったと思われますが、こうすれば腐らないという保存法
を発見していることに驚きます。
リンゴで医者いらず
間もなく風邪の季節に入ります。夏の冷房による冷えが効いてくる時期であり、免疫力を低下
させ、体調を崩しやすい季節であります。
そんな季節には、旬の「リンゴ」をおすすめします。
「1日に1個のリンゴは医者を遠ざける」
実は、これはイギリスで生まれたことわざで、リンゴには多彩な栄養素が含まれていて、毎日
食べれば医者いらずという意味です。
実際に、多数の医学的効果の研究結果が発表されています。
まずは高血圧に。
リンゴを1日3個以上食べると血圧が低下するといわれ、豊富に含まれるカリウムの効果だと
されています。
その結果、脳卒中や心臓病になるリスクが減るということで、フィンランドで行われた疫学調
査では、約40%もリスクが下がった報告があります。
中性脂肪も下がるという研究結果もあります。
また、総コレステロールと悪玉コレステロールを低下させ、善玉コレステロールを増加させる
ことも確認されています。
これはペクチンという水溶性食物繊維が、腸内にある脂肪分と結合することによってコレステ
ロール値を下げる作用をしているようです。
さらに善玉菌が増えることで腸内環境が良くなり、大腸ガンのリスクを下げることも期待でき
ます。
ペクチンは粘膜保護作用もあり、風邪を引いた時に、すりおろしリンゴを食べるのは、リンゴ
酸の消炎作用と合わさってその効果を期待するからです。
食物繊維も豊富で、その質は芋類や豆類などにひけをとらないといわれています。
果物の中ではビタミンCの含有量が多くないリンゴですが、体内に取り込む効率が高く、結果
的に多くのビタミンCを摂取できるという研究結果もあります。
アメリカの研究では、成人男性で、血液中のビタミンC濃度が高いグループは、低いグループ
よりガンになるリスクが62%も低いという報告もあります。
実は、リンゴの栄養成分は、皮と果肉の間に特に多く含まれるので、まるかじりで食べるべき
です。皮ごと調理する方法も良さそうです。
毎日リンゴを食べて、体内を丈夫に整えて、寒さ季節を乗り切りましょう。
寒さに強く 暑さに弱い O157
病原性大腸菌「O157」による被害のニュースを頻繁に出てきています。
10月に入って、前橋市の40代の男性がO157に感染し、その毒素の影響で溶血性尿毒症
症候群により死亡したニュースがありました。
感染経路を調べていますが判明していないようです。
8月には、埼玉県と群馬県で販売された惣菜店の商品が原因とみられるO157の集団感染が
発生し、その中の3歳の女児が命を落としてしまいました。
こちらの感染経路は、当初加工場から出荷されたポテトサラダが疑われておりましたが、未だ
特定されておりません。
亡くなった女の子は、その惣菜店の加熱調理された食品だけを食べており、そうなると調理後
に汚染され可能性が高く、取り分けするトングかを介して別の食品から移ったのでないかとい
われておりますが、はっきりとはしていません。
ほとんどの大腸菌に害はありませんが、現在、唯一4種類の大腸菌は、人間の体に害のあるこ
とが確認されており、その中の一つのO157が含まれるのが「腸管出血性大腸菌」です。
ベロ毒素という物質を出すことから、「ベロ毒素産生性大腸菌」とも呼ばれます。
このベロ毒素は、40代の男性感染者の死因となった溶血性尿毒症症候群や脳症を引き起こし
重症化させる強力な毒素です。
ただし、重症化するのはまれで、成人では感染しても、無症状だったり、軽い下痢で終わるこ
とも少なくないようです。
また激しい腹痛を伴った下痢症状になっても、5~10日前後で治ることがほとんどのようで
す。
注意しなくてはいけないことは、症状が軽かったり、出なくなったあとでも、便に混じって菌
が排出されているということです。
気をつけていないと、回りに感染を拡大させてしまいます。
O157は、主に牛や豚などの家畜の大腸をすみかとしていますが、水の中や土の中でも数週
間から数ヶ月間生きていられるといわれます。
また、低温に強いため冷蔵庫内でも生きることができ、さらに、酸にも強いため、胃酸の攻撃
に耐え、腸までたどり着いてしまいます。
ただし、熱に弱く、75℃で1分間加熱すれば死滅しますので、感染を予防するために、加熱
して調理する食品は、しっかり火がとおるように十分に加熱することが大切です。
また、手洗いは予防の基本中の基本です。
トイレで用を足した後に手を洗わない人が意外と多くいます。その手で、あちこち触られたら
堪ったものではありません。
トイレでスマートフォンをいじるというのも、大腸菌が付着する可能性があります。
トイレで用を足した後や外出から帰ってきたときはもちろんのこと、調理前や食事前にはしっ
かり石けんで手洗いをしましょう。