2018年7月
抗生物質の無駄使い
先日の日本経済新聞の記事によりますと、抗生物質はウイルス性の風邪に効果がないのに、患者に
求められれば処方する医師が6割もいることが分かりました。
抗生物質はあくまでも細菌に作用する薬です。鼻、喉、喉の奥の感染症が風邪とされ、主にウイルス
が原因ですので効果はありませんが、抗生物質を飲めば風邪が早く治るなどの誤解あるようです。
医師はそれを分かっていて、ウイルス性の風邪と診断した場合でも、患者などに抗生物質の処方を
希望されると、「説明して納得しなければ処方する」という医師が50%、「希望どおり処方する」
という医師が13%いるということでした。
これに対して、「説明して処方しない」は33%だったようです。
また、10~60代の一般の男女710人を対象にした調査では、抗生物質が有効な病気はという
質問に、インフルエンザが50%、風邪が44%と回答した人がいたということです。半数以上の
人が、抗生物質がウイルス性の病気にも効くと考えていることが分かります。
昨年6月に厚生労働省は、軽い風邪や下痢の症状に抗生物質の使用を控えるよう、医師の診断手順
などを示した手引書を公表しています。
不適切に抗生物質を繰り返し処方されることで、有効であったはずの抗生物質が効かなくなり、打
つ手がなくなってしまうと危惧されているからです。
手引書では、「抗生物質は風邪には効かない」と告げることなどが書かれているようですが、未だ
6割の医師が不適切に処方しているのですね。
ウイルスが体内で増殖するのを抑えてくれるのは、抗ウイルス薬です。治す薬ではありません。
タミフルやリレンザが、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス薬になります。
また細菌による感染症とはいえ、抗生物質の飲みすぎは、もともと備わっている免疫力をどんどん
下げてしまいます。そうなると、他の病気にもかかってしまい、悪循環になります。
重要なことは、まず感染症にかからないよう予防をしっかり行うことです。
かかってしまっても、抗生物質、抗ウイルス薬はできるだけ服用せず、自分の体の免疫力で治すよ
うにしましょう。
そして日頃から免疫力を上げるように心がけましょう。
キッチン周りの除菌実験
東京都福祉保健局では、「くらしに役立つ食品衛生情報」を発信しています。
前回は、食中毒の実験でO157に対する加熱実験でした。
他にも面白い実験をしていて、洗浄・殺菌に関する実験を公開しています。
一つ目の実験は、台所回り8箇所の細菌数検査をしています。
検査している細菌は雑菌と、黄色ブドウ球菌です。
摂取した場所は、フキン、食器洗い用スポンジ、まな板、水道カラン、包丁、冷蔵庫の野菜室の底、
シンク、ペットを触ったあとの手の8箇所です。
この中で、もっとも細菌が多かったのが食器洗い用スポンジでした。他の箇所に比べて異常に多く
の細菌が検出されています。黄色ブドウ球菌も検出されています。洗剤を付けて使いますので清潔
そうですが意外でした。
フキンやまな板も細菌数が多くなっていました。その他は少し細菌が認められるぐらいでした。
食器洗い用スポンジ以外で黄色ブドウ球菌が検出されたのは、冷蔵庫の野菜室の横とシンクだけの
ようです。
一見清潔に思えても、いろいろな所に細菌が付着していることが分かります。
次にフキンの除菌実験があります。
ただの水洗いではフキンの細菌は落とせませんので、いくつかの方法で実験しています。
まず、熱いお湯を浸した実験では、70℃と90℃共に一瞬で除菌されています。
塩素系の漂白剤でも同様の結果となっています。
酸素系漂白剤では5分程度、70%アルコールでは1分程度の時間が掛かっています。
酸素系漂白剤の除菌力は弱そうですから、洗濯の際の色柄物用の酸素系漂白剤も同様に長く付けて
おかないと効果が低いかもしれません。
先程の食器洗い用スポンジなどは、熱湯消毒が有効そうです。塩素系漂白剤が使えないものも熱湯
消毒が良さそうですね。
ちなみに、汚れが付いていると殺菌効果が落ちるため、まずは洗剤でよく洗って汚れを落としてお
くことが必要ということです。
加熱で食中毒予防の肝心
梅雨から夏にかけてのこの季節は非常に食中毒が発生しやすい時期ですね。
東京都福祉保健局では、「くらしに役立つ食品衛生情報」を発信していて、食中毒に係る面白い実験
をしています。
その中で、O157に対する加熱実験があります。
一つ目は、コーンクリームスープにO157を入れ、どれぐらい加熱すれば死滅するかという実験で
す。
1mlあたり約100万個のO157を入れて加熱します。
加熱温度が70℃以上で1分以上の加熱をすれば、菌はすべて死滅していますが、58℃だと10分
加熱しても、菌は少し減少するだけの結果となっています。
60℃であれば、10分ですべて死滅しています。
次にO157を付着させたハンバーグをホットプレートで焼く実験では、フタをして焼いた場合、片
面3分ずつ計6分で菌は完全に死滅しています。
片面2分程度では中心温度が高くならないためか、完全に死滅しない場合があるようです。
フタをしないで焼いた場合、片面を5分焼いて裏返して1分焼き、中心温度が75℃に達していても
死滅していません。もう3分ぐらい焼かないと菌は無くならないようです。
フタをした方が、衛生面でも効率も良いようです。
次に焼肉の場合で、牛カルビをホットプレートで焼いた実験です。
牛カルビにO157を付着させ、200℃になったプレートで焼いた場合、両面を1分ずつちょうど
良い焼き加減であれば全て死滅していました。
ハンバーグは、いかに火が通りにくいかが分かります。
ただし気をつけることは、焼肉では生肉を取る箸と食べるときの箸は別にするということです。
実験では、O157だけでなく他の代表的な食中毒菌を混ぜて死滅実験も行っています。
サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌を混ぜて、コーンスープとリン酸緩衝液に接種し75℃
で1分間加熱すると、すべて死滅した結果となっています。
しっかり加熱すれば、大抵の食中毒菌は死滅するということです。それも、菌数が少ない方が少ない
加熱で死滅することが確認されているそうです。
ただし、加熱できない食材もありますから、食中毒予防の基本は、菌を付けない、増やす環境を与え
ないことです。生の状態では素早く冷蔵あるいは冷凍をするようにしましょう。