2017年7月
リケッチアもあります
リケッチアという病原体らしからぬ名前の細菌がいます。
リケッチアは、生きた細胞内で増殖する特殊な小さな細菌です。
もともと野山に生息するダニやツツガムシなどの節足動物に寄生しており、それらに刺される
と感染します。
リケッチアが原因の感染症は、「ツツガムシ病」と「日本紅斑熱」が主なものです。
ツツガムシ病は、ツツガムシという小さなダニの幼虫が媒介し、日本紅斑熱は、マダニが媒介
します。
マダニについては、マダニが媒介するウイルスによる感染症で死者が出たことが話題になって
います。
この感染症は、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)で、2011年に中国の研究者らによっ
て発表された新しいウイルスによるダニ媒介性感染症です。
リケッチアは、1907年にアメリカの科学者が発表しており、その科学者の名にちなんで命名
されました。
ツツガムシ病も日本紅斑熱も潜伏期間を経て、40℃前後の高熱、発疹、倦怠感の症状が現れ
ます。
両方とも「刺し口」と呼ばれる中心が黒いかさぶたのようなものができ、それで気付くことも
あるようです。
ウイルスに似て生きた細胞に侵入しなければ増殖できない性質ですが、細胞としての装備を備
えた細菌であるため、抗生物質で治すことができますが、この感染症に気付かずに診断・治療
が遅れて、死に至ったケースもあります。
毎年の感染者数は意外と多く、ツツガムシ病は2016年には500人を超えています。
日本紅斑病は例年200~300人程度で推移しています。
野山でダニに刺されたからといって、必ずリケッチア症になるわけではありません。
過度に心配する必要はありませんが、野外で行動する場合は、必要以上に肌を露出しないこと
と、野生動物の死骸などにできるだけ触れないことなどして注意しましょう。
手足口病が急増 それ以外の感染症も
手足口病は、これから流行する夏風邪の一つで、特に乳幼児が感染しやすい病気です。
その手足口病の患者数が、例年より多くなっていると、日本経済新聞の記事にありました。
手足口病は、エンテロやコクサッキーというウイルスが原因の感染症です。
ウイルスが原因ですので、抗生物質は効果がありません。ワクチンもありませんので、予防が
大切になります。
感染経路は、飛沫感染、接触感染が主な経路といわれていますので、手洗いやマスクが予防対
策となります。
ただ、発症しやすいのは乳幼児が多く、生活距離が近いため、保育園や幼稚園での集団感染が
起こりやすい状況になるようです。
症状は、最初に口の中に痛みが生じ、口内に白いポツポツができ、手のひらや足の裏、指の間
にも拡がる白い2~3mm程度の水疱性発疹が出ます。
約3分の1の人は発熱を伴うことがありますが、通常軽い症状で済むことがほとんどで、子供
のうちにかかって免疫をつける感染症のようです。
国立感染症研究所に発表によりますと、6月19日から25日の全国から手足口病の患者報告
数は7,613件あり、1医療機関当たりでは、2.41人となっています。
都道府県別では、飛びぬけて大阪府が多く、その次に兵庫県、福岡県、東京都、神奈川県、
愛知県の順で多くなっています。
1医療機関当たりの患者数が多いのは、高知県、鳥取県、香川県、滋賀県、宮崎県などで、西
の方から流行してきているようです。
この国立感染症研究所の週報によると、手足口病以上に、咽頭結膜熱やA群溶血性レンサ球菌
咽頭炎も例年以上に患者数が多くなっているのが分かります。
また結核についても、この1週間で436人の患者が報告されております。
今年の累積数は10,547人もの患者がいるということです。昨年同時期と比較してほとんど
変わっていないというのが現状です。
今年はそれほど話題になっていませんが、デング熱もすでに3件の報告数があります。
常にさまざまな感染症のリスクにさらされています。それぞれに合った予防知識を身につけ、
対策をしっかり行うが大切ですね。